2016-02-01

恵比寿映像祭 地域連携プログラム「夢にみる空き家の庭の秘密」展


恵比寿映像祭2016
地域連携プログラム 参加企画


夢にみる空家の庭の秘密
The Secret of the Vacant House Garden Seen in a Dream


TRAUMARISとの共催により、「第8回恵比寿映像祭2016」地域連携プロジェクトに参加いたします。映像祭の総合テーマ「動いている庭」と連動した企画展示と、ダンサー/アーティスト川口隆夫によるパフォーマンス公演「Slow Body」を開催します。

©sai


夢にみる空家の庭の秘密


The Secret of the Vacant House Garden Seen in a Dream



展示会期:
2016年2月12日(金)〜2月14日(日)
OPEN 13:00〜21:00
入場料 ¥500(1D付き)



企画・共催:
住吉智恵(TRAUMARIS アートプロデューサー)
http://traumaris.jp/space/2015/12/post-22.html



共催・会場:
AL
〒1500022 東京都渋谷区恵比寿南3-7-17 1F
TEL:03-5722-9799



構成:
パフォーマンス
川口隆夫「Slow Body」
2月12日(金)20:30開演
入場料 2500円(1ドリンク付き)



展示:
青木美歌(アーティスト)
sai(フォトグラファー) 
山本修路(アーティスト・造園家)



● 本企画についてのお問合せ



企画主旨:

庭は動いている宇宙だ。 
高校・大学時代に庭園史に興味をもったきっかけは「去年マリエンバードで」「美女と野獣」「英国式庭園殺人事件」など、その頃かぶれていたヨーロッパの前衛的な映画だった。
ヨーロッパの庭園建築は、イタリア・ルネサンスのテラス式庭園、絶対王政時代のフランス式整型庭園、18世紀の英国式回遊庭園、といった様式の変遷のなかで、常に人々にキリスト教的宇宙観を啓蒙するメディアであり、楽園の象徴だった。
カトリックの学校で荘厳な教会建築に親しんでいた自分にとって、半ば外界に開かれ、創造主の造った完全無欠の自然に対峙し、人智を尽くしてユートピアを再現しようとした造園家たちのそのチャレンジ精神に強く惹きつけられたのかもしれない。
庭に惹かれた記憶はさらに幼少期に遡る。
猫の額ほどの世田谷の実家の庭は、鹿威しや蹲い、灯籠が設えられ、松や紅梅、寒椿、沈丁花、ヤツデ、アオキなどが鬱蒼と茂り、陽のあまり入らない暗くじめじめした和風の坪庭であった。
緑苔に覆われた固い地面の下で這いまわるミミズやナメクジ、ダンゴムシ。生き物のような繊毛の生えた渦巻きの新芽を出す羊歯。ボウフラがわきアメンボがとまる小さな添水。かちかちの地表を突き破ってほっそりとした茎をのばすヒメシャガや鈴蘭などの可憐な草花。
そこかしこに生命がひそみ、蠢いているさま。植物や小動物、昆虫、微生物たちの織り成す、目に見えない矮小な生態系が、限られた環境のなかで息づいているさま。それが原風景としての「庭」のイメージだ。
やがて高校時代、手にとった萩原朔太郎の詩集「青猫」のなかで、一編の詩「夢にみる空家の庭の秘密」に出合う。そこには、子どもの時分から一人遊びのきわめて個人的な小宇宙であり、繰り返し夢にまで現れた庭の情景がそっくりに描写されていた。
次に心惹かれた庭は英国にあり、辿り着けていない。
映画監督デレク・ジャーマンは、英国の海岸地帯ダンジェネスで、原子力発電所周辺の貧しい土壌の地にぽつねんと建つ漁師小屋に引きつけられ、それを買い取る。少年時代から庭仕事に精通していた彼は、HIV/AIDSで日ごとに衰弱する肉体から微かに残る胆力を絞り出すように、その庭に荒れ地でも育つ生命力の強い植物を植え、海岸で拾った鉱物やガラクタでストーンサークルを組みあげていく。
写真集「デレク・ジャーマンズ ガーデン」は特別な本だ。
すかすかに乾いた険しい大地に宿る命を精いっぱい吸いあげようとする営みと、茫洋とした風景に息づく無骨に捩じれた灌木やたくましい草花に、今でも頁を繰るごとに強く心を動かされる。
ベランダガーデニングにも手を染めたが、腐葉土を注入されてふかふかに心地よく設えられた花壇やプランターにはないものを求めていた。近年流行も粋を極めたのか、低温低湿に強い多肉植物や地味な高山植物を育てる歓びを知った人が多いと聞く。それならば、かねてより夢に現れ、遠く英国に思いをはせたあの庭を再現できるかもしれない。
本展では、生き物にとって厳しい自然環境、限定された空間と条件のなかで生命力を凝縮し、培養することの可能な庭のイメージを、多様なアーティストの表現と共に掬いあげる。
造園家でもあり、青森県の奥入瀬渓流や津軽などの生態系からさまざまな自然現象を抽出し、作品化する活動を続けるアーティスト、山本修路。
「地球の外庭」ともいえるアイスランドの荒涼とした自然に、自身の立ち位置とサウダージの拠りどころを見出したフォトグラファー、sai。
並行世界から現れた有機体のような、冬の最初の霜柱の精を思わせる、頑なで凛と澄んだ佇まいのガラス彫刻をつくりつづけるアーティスト、青木美歌。
そして、ダンスとも演劇とも割り切れない、モノローグ的な独特のパフォーマンスにより自身の生き様を表現してきた川口隆夫が、2013年に続いて恵比寿映像祭に登場する。彼はかつてデレク・ジャーマン監督『クロマ』の共訳のため、ダンジェネスの庭を訪れている。
本企画では、作家たちの表現を借りて、さまざまな自然の様相と、植物・鉱物・動物の関係性に注目する。人智を尽くしてユートピア像を具現化しようとした庭園史を紐解きながら「新しい庭」の姿をおぼろげにでも想像することができればと考えている。

住吉智恵
TRAUMARIS主宰。アートプロデューサー、ライター

プロフィール:
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青木美歌  Mika Aoki


2006年 武蔵野美術大学 / 工芸工業デザイン科ガラス専攻卒業
個展
2010 SICFグランプリ受賞者展(スパイラルショウケース/青山)
     個展(PLSMIS /青山)
2009 個展(もりもとアートギャラリー /銀座)
     個展(日比谷パティオ /日比谷)
2008 個展(savoir vivre /六本木)
2007 個展(09ʼ/ mitateギャラリー /西麻布)
グループ展
2015 YOUNG & LOVING2015 (S12ギャラリー /ノルウェー)
2015 Within Light/Inside Glass (ヴェネチア)
2014 BIWAKO ビエンナーレ (近江八幡)
    高島屋幻想博物館展(高島屋美術画廊)
2013 COLLECT (Saatchi Gallery /ロンドン)
2013 FROM THE KILN-窯の中から- (スパイラルガーデン/青山)
2012 六本木アートナイト(六本木ヒルズ)
    BIWAKO ビエンナーレ (ʼ12 ʼ14 / 近江八幡)
2012 ISETAN 彩り祭(新宿伊勢丹)
2010 BIWAKO ビエンナーレ (近江八幡)
2010 手数系 (AKIgallery/ 台北)
2010 夜の庭展(59RIVORI-AFTERSQAT/Paris)
2009 アートフェア東京 (ʼ10 )
2009 丸沼芸術の森展(09ʼ~15ʼ / 埼玉)
2009 シブヤスタイル展(渋谷SEIBU)
2008 第11回岡本太郎現代芸術賞展(川崎市岡本太郎美術館)
2007 Born In HOKKAIDO 展 (北海道近代美術館)
パブリックアート
2011 太田記念病院エントランス
コレクション 
高橋コレクション
主な仕事
2014  Kashiwa Daisuke CDジャケット
2012  ELTTOB TEP ISSEI MIYAKE ウィンドウディスプレイ
2010  村上龍 単行本「歌うクジラ」表紙
2010  石井竜也コンサート 舞台美術
2008  LUNA SEAベストアルバムジャケット
2007  YOSSY LITTLE NOISE WEAVER アルバムジャケット


賞歴
2010  SICFグランプリ(青山スパイラル)
2008  第11回岡本太郎現代美術展入選
2006  Jeans Factory Art Award 準グランプリ
2006  武蔵野美術大学卒業制作優秀賞



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photo by bozzo

 川口隆夫  Takao Kawaguchi



大学時代よりパントマイムを基礎としたムーブメントシアターのテクニック、<ミーム>を学ぶ。その期間、テキストベースの芝居からパフォーマンスアートやダンスなど、幅広く数多くのプロジェクトに参加する。その後、スペイン留学を経て、1990年よりダンスカンパニーATA DANCEを吉福敦子と共同で主宰し、多くのダンス作品を発表。1996年から2008年までパフォーマンスグループ「ダムタイプ」に参加、『OR』、『メモランダム』、『ヴォヤージュ』に出演する。
並行して2000年以降はソロを中心に、演劇・ダンス・映像・美術をまたぐ舞台パフォーマンスの幅広い可能性を探求。まさに「パフォーマンスとしか言いようのない(朝日新聞評2005年3月12日、評論家・石井達朗氏)」作品を発表している。主な作品に『ディケノヴェス』(2003)、『D.D.D.』(2004)、『TABLEMIND』(2006)、『グッド・ラック』(2008)などがある。
照明デザイナー藤本隆行(ダムタイプ)、ダンサーの白井剛、音楽の真鍋大度らと『true―本当のこと』(2007)を共同制作、現在も国内外で上演を重ねている。
近作に『病める舞姫をテクストに―二つのソロダンス』(共演:田辺知美、大野一雄フェスティバル 2012)、『大野一雄について』(大野一雄フェスティバル 2013)、『他者の手 Touch of the Other』(2014/2015)。
2008年より「自分について語る」をテーマにしたソロパフォーマンスシリーズ『a perfect life』を、シカゴ(2008)、隅田川(2008)、青山(2009)、日暮里(2009)と継続的に展開。Vol.6「沖縄から東京へ」で第5回恵比寿映像祭(東京都写真美術館、2013)に参加した。
東京国際レズビアン&ゲイ映画祭のディレクター(1996〜99)、イギリス実験映画監督デレク・ジャーマンの『クロマ』共訳(03 アップリンク)、短編映画『KINGYO』(エドモンド楊監督、09ヴェネチア映画祭正式招待作品)に出演するなど、その活動は多岐にわたる。



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©sai

sai


フォトグラファー。武蔵野美術大学造形デザイン科大学院修了。
グラフィックデザイナーを経て独学で写真を始める。雑誌、広告等、アーティストポートレイト、写真集などの分野で活動。テレビCM、ミュージックPVなどの映像カメラマン、映像監督も手がける。プライベートワークではランドスケープや植物を中心にした作品を発表。雑誌「CREA」にアイスランドの写真とエッセイを寄稿。


個展
2014 「ポートレイト」/恵比寿 ABG 
2010 surroundings「小さな死」/ 青山 PLSMIS
2009 「途切れることのないおとのつらなり」/ 未来画廊 
2008 「ヨルノイロ」/ MAIZON GODNARSKI daikanyama 
2007 「ヨルノオト phoneme 」/ clementsalon*workshop 
2005 「surroundings」/ up field gallery 
2001 「a portrait in valuable parts」/ Axis gallery Annex Roppongi 


グループ展
2011 Suntory マッカランハイボール SPARKLING MOMENT ! 映像展 / 
    渋谷sunday issue 
2008 Vu per sai-le jardin blanc / MAIZON GODNARSKI daikanyama 
2008 内在するもの エロス的表現 / up field gallery 
2002 都市におけるロールプレイング / TN probe gallery


仕事
映像(監督・撮影)、広告、雑誌、web、写真集など多数


伊豆大島プロジェクト
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Forest of Seedling (37 spruce) / 実生の森 (37本のトウヒ)2011年  石、土、苔、実生 他


山本 修路  Shuji Yamamoto

1979年 東京都生まれ。
2005年 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。

個展 
2014 「酒プロジェクト」island Japan、東京
2012 「Forest of Seedling」island Japan、東京
2011 「Story of Forest」十和田街なかギャラリー、青森
2008 「松景 其之貳」ラディウム・レントゲンヴェルケAG、東京
2007 「PINES」PHギャラリー、ニューヨーク
    「松 from lammfromm」ラムフロム、東京
2005 「松景」ヴァイスフェルト・レントゲンヴェルケ、東京
    「松景」絵馬、東京

主なグループ展
2014 「そらいろユートピア」十和田市現代美術館、青森
2013 「SURVIVE-この惑星の、時間旅行へ-」十和田市現代美術館他、青森
    「flowers」十和田市現代美術館、青森
    「超訳 びじゅつの学校」十和田市現代美術館、青森
2012 「Arts Towada 奥入瀬プロジェクト」焼山エリア、青森
    「Parallel Waves」RED ELATION GALLERY、香港
    「広重の旅-日常の中の遠い場所-」蔦屋書店2号館、東京
2011 「NEXT - TWS10年!」TWS渋谷、東京
    「GOOD NIGHT MIHOKANNO」3331Arts Chiyoda/アキバタマビ  
     21、東京
2009 「自宅から美術館へ:田中恒子コレクション展」和歌山県立近代美術   
    館、和歌山
    「Hello! MIHOKANNO」TWS渋谷、東京
2008 「Vrishaba through Mithuna」ヒロミヨシイ、東京
2006 「Landschaft」ヴァイスフェルト・レントゲンヴェルケ、東京

パブリック・コレクション
2008 十和田市現代美術館、青森

レジデンスプログラム
2011 サーリレジデンス、フィンランド



萩原朔太郎  

夢にみる空家の庭の秘密(『青猫』より) 


その空家の庭に生えこむものは松の木の類 
びはの木 桃の木 まきの木 さざんか さくらの類 
さかんな樹木 あたりにひろがる樹木の枝 
またそのむらがる枝の葉かげに ぞくぞくと繁茂するところの植物 
およそ しだ わらび ぜんまい もうせんごけの類
地べたいちめんに重なりあつて這ひまはる 
それら青いものの 生命いのち それら青いもののさかんな生活
その空家の庭はいつも植物の日影になつて薄暗い 
ただかすかにながれるものは一筋の小川のみづ 
夜も晝もさよさよと悲しくひくくながれる水の音 
またじめじめとした垣根のあたり 
なめくぢ へび かへる とかげ類のぬたぬたとした氣味わるいすがたをみる。 
さうしてこの幽邃(ゆうすい)な世界のうへに
夜よるは青じろい月の光がてらしてゐる 
月の光は前栽の植込からしつとりとながれこむ。 
あはれにしめやかな この深夜のふけてゆく思ひに心をかたむけ
わたしの心は垣根にもたれて横笛を吹きすさぶ 
ああ このいろいろのもののかくされた祕密の生活
かぎりなく美しい影と 不思議なすがたの重なりあふところの世界
月光の中にうかびいづる 
羊齒しだ わらび 松の木の枝 
なめくぢ へび とかげ類の無氣味な生活 
ああ わたしの夢によくみる このひと住まぬ空家の庭の祕密と 
いつもその謎のとけやらぬおもむき深き幽邃のなつかしさよ。


TRAUMARIS HP :  http://traumaris.jp/space/2015/12/post-22.html
恵比寿映像祭 HP : http://www.yebizo.com/